ピロリ菌(H.pylori)とは
正式名称はヘリコバクターピロリで、人などの胃の粘膜に生息している螺旋の形をした細菌です。菌の端に鞭毛と呼ばれる、しっぽのような毛が4~8本ついていて、それらがプロペラのように回りながら活動しています。ピロリ菌は、慢性胃炎、胃・十二指腸潰瘍、胃がんなど、胃に関連した重大な症状を招く疾患の原因のひとつでもあります。
桶川中央クリニックでは胃潰瘍・十二指腸潰瘍の治療を行っております。少しでも胃やお腹に違和感がある方は、ご遠慮無くお問合わせ・ご来院ください。
ピロリ菌の感染源
感染経路はまだ明確には解明されていませんが、口からの感染が大部分であるといわれています。また子供の時期には胃酸の力が弱いことから、大半が5歳以前の幼少期に感染するともいわれています。衛生環境との関係性もあると考えられており、水道設備等がしっかり整備されていなかった世代の方の感染率が高くなっています。キスやコップの回し飲み等の日常生活における感染はないと考えられています。
ピロリ菌感染により引き起こす症状や疾患
ピロリ菌感染により発症し得る症状としては、胸やけ、吐き気・嘔吐、胃もたれ、食欲不振、空腹時の痛み、食後の腹痛などがあげられます。
もともと胃の中の胃酸は強い酸性であって、通常の細菌は死んでしまいます。しかしピロリ菌はウレアーゼという特殊な酵素を出しアンモニアの膜を作ることで、胃酸の中でも生きることができてしまいます。このアンモニアが胃の粘膜に傷をつけることや、菌から胃を守ろうとする免疫反応から胃の粘膜が炎症してしまい、萎縮性胃炎、胃潰瘍・十二指腸潰瘍、慢性胃炎、胃MALTリンパ腫、胃がんなどの疾患を引き起こす場合もあります。
胃・十二指腸潰瘍
胃潰瘍や胃・十二指腸潰瘍の患者の8割以上がピロリ菌に感染していることなどから、ピロリ菌が胃・十二指腸潰瘍の原因であることがわかります。一度治療しても1年後には60%以上の方が再発してしまうなど、厄介な病気とされていました。しかし最近では、ピロリ菌を除菌することで、胃に関連した疾患の再発率を下げることができます。十二指腸潰瘍患者のピロリ菌を除菌すると、1年間に再発する患者の割合を85.3%から6.8%まで下げることができたという報告もあります。
胃がんのリスク
ピロリ菌は胃がんとの関係性が高いともいわれています。あるの調査によると、10年間で胃がんになった人の内、ピロリ菌に感染していない人は0%、感染していた人は2.9%でした。ピロリ菌によって胃の粘膜が痛み萎縮し、萎縮性胃炎(ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎)に発展し、胃がんの原因に繋がると考えられています。
胃の病気以外への影響
最近の研究ではピロリ菌の感染と、血小板減少症や皮膚の慢性じんましんや緑内障などとの関連性も解明されてきています。その他にも冠動脈の動脈硬化との関連性があることなども、指摘されるようになりました。
ピロリ菌の検査
ピロリ菌感染の有無を調べる検査には、胃カメラ検査で行うものと、そうでないものがあります。保険適用の検査と除菌治療のためには胃カメラ検査が必要です。
内視鏡を使わない検査
尿素呼気試験法
診断薬を服用して行う検査です。服用前と服用後の呼気を集めて調べます。気軽に受けることができ、精度が高いため、当院では除菌治療の成功判定に用いています。なお、除菌治療の成功判定の場合は保険適用されますが、感染の有無を調べる検査は胃カメラ検査が必要になります。
抗体測定
細菌に感染すると人間の身体は抗体を作ります。この抗体は血液や尿に含まれるため、それを採取して抗体を測定します。ただし、保険適用のピロリ菌検査や除菌治療には、胃カメラ検査が必要になります。
便中抗原測定
ピロリ菌に感染している場合、便にその抗原が確認できます。便を採取してピロリ菌の抗原がないかを確認します。ただし、保険適用のピロリ菌検査や除菌治療には、胃カメラ検査が必要になります。
内視鏡を使う検査
胃カメラ検査時に胃粘膜の一部を内視鏡で採取して調べる検査です。
培養法
採取した組織をすりつぶし、ピロリ菌の発育環境で培養します。5~7日すると感染の有無がわかります。
迅速ウレアーゼ試験
ピロリ菌はウレアーゼという酵素を持っています。採取した組織をウレアーゼに反応する特殊な液体に入れ、色の変化で感染の有無を調べます。
組織鏡検法
採取した組織を染色して、顕微鏡でピロリ菌を確認する検査です。
ピロリ菌の除菌
除菌に成功した場合、慢性胃炎や胃潰瘍などの症状は改善していきます。ただし、重い症状がある場合には除菌治療より慢性胃炎や胃潰瘍の治療を優先させ、その後に除菌治療を行うこともあります。
ピロリ菌の除菌治療は、2種類の抗菌薬と、1種類の胃酸分泌を抑える薬を1日2回、7日間服用するという内容です。ただし、この除菌治療は成功しない可能性があります。除菌の成功率は、1回目の除菌治療で約75%~90%となっており、2回の除菌治療を合わせて97%程度が成功するとされています。
こうしたことから、除菌治療を受けて薬の服用が終わったら、成功判定が必要になります。正確な結果を得るために、当院では4週間以上経過してからの判定検査を行っています。判定検査は、呼気で簡単にできる方法を導入しています。
1回目の除菌治療が成功したらそこで治療は終了です。失敗していた場合には、ご希望があれば抗菌薬を1種類変更して2回目の除菌治療も可能です。服用の頻度や回数、成功判定検査に関しては1回目の治療と同様です。2回目の除菌治療も健康保険の適用になります。
3次除菌について
ピロリ菌の除菌治療では、1回目と2回目の除菌治療を受けても除菌に失敗してしまうケースが2~3%存在するとされています。ご希望される場合には、3回目以降の除菌治療も可能ですし、4回・5回目の除菌治療で成功したケースもあります。ただし、3回目以降の除菌治療には、健康保険適用はされないため、自費治療となります。
食生活の心がけ
食事の仕方の心がけ
『正しい食習慣』
毎日の食事時間は規則正しくするようにしましょう。体内の臓器にもリズムがあり、規則的な食習慣を保つことが重要です。
『消化に優しく』
胃の消化の負担を減らす意識を持ちましょう。食事の際にはよく噛むようにし、腹八分目までに抑える、消化を助けるような調理の工夫をするなどといった意識が必要です。
食べ物の心がけ
『脂っこいものを控える』
ステーキ、とんかつ、からあげなどの胃に滞る時間が長い食品(脂の多い食品)は、胃に大きな負担をかけます。消化の良い食べ物を意識して食べるようにしましょう。
『粘膜を刺激する食べ物を避ける』
胃の粘膜を刺激してしまうと、粘膜の防御機能が低下してしまい潰瘍を引き起こしやすくなります。アルコールやカフェイン、炭酸飲料、繊維の固い物などは避ける必要があります。
生活習慣の心がけ
胃の粘膜への刺激はストレスに強く起因します。医師から処方された薬をしっかりと飲み続け、更に以下のような行動は避けるようにしましょう。
- 喫煙行為(潰瘍の治りにくさや再発しやすさは喫煙量に比例します)
- 感冒薬や消炎鎮痛剤の連用
- 夜更かし
- 過度なストレス