生活習慣病について
生活習慣病には、糖尿病や高血圧症、脂質異常症(高脂血症)、痛風(高尿酸血症)、そしてメタボリックシンドロームがあります。過食や肥満、運動不足などの生活習慣によって起こり、動脈硬化を進ませて脳梗塞や心筋梗塞といった重大な疾患のリスクを上昇させます。
生活習慣病はそれぞれの病気が軽度でも、重なることで動脈硬化により、心疾患や脳卒中などのリスクを大きく上昇させてしまいます。メタボリックシンドロームはこれに該当します。
ただし、生活習慣病は、食事療法や運動療法を行うことで改善できます。生活習慣の改善はお一人で続けていくのがとても難しいものですが、当院では患者様と相談しながら、無理なくできる範囲の具体的な改善方法を見つけていって、長く続けられるようサポートしています。また、必要な場合には薬物療法も行いながら、患者様がご自分のお身体の状態を適切にコントロールして、快適にお過ごしいただけるよう心がけています。
糖尿病
身体の細胞はすべて、血液に含まれる糖分(ブドウ糖)を取り込んでエネルギーにしています。糖尿病は、細胞が糖分を取り込めなくなり、血液に過剰な糖分があふれて高血糖状態が続く病気です。
細胞が糖分を取り込む際には、インスリンというホルモンの働きが不可欠です。また、インスリンは糖分を脂肪やグリコーゲンに変えて筋肉や肝臓に蓄える際にも働きます。インスリンが不足したり、うまく作用しなくなることにより高血糖になってしまいます。
糖尿病の高血糖状態は、全身の血管に大きな負担をかけ続けるため、動脈硬化が進行して心筋梗塞や脳梗塞などのリスクを上昇させます。また、糖尿病にはたくさんの合併症があり、中でも失明・腎不全による透析・足の切断など重篤な症状を引き起こすものは糖尿病の三大合併症と呼ばれています。
糖尿病の治療
現代の医学ではまだ糖尿病を完治させることはできませんが、血糖値を正常に保つことはできます。血糖値を正常にコントロールすることができれば、動脈硬化のリスクが抑制できますし、合併症を防いで健康な状態を維持することが可能です。
特に重要なのは、食事療法と運動療法です。医師の指導のもとで、適切な食事内容や運動をしっかり行うだけで正常な血糖値にコントロールできるケースもあります。かなり進行している場合や、食事や運動だけでは血糖値が十分に下がらない場合には薬物療法やインスリン療法を併用して正常な血糖値をキープしていきます。
糖尿病の三大合併症
糖尿病性網膜症
目には細かい毛細血管が縦横に張り巡らされています。特に、光や色を感じる神経細胞がぎっしり集まった網膜には毛細血管が多く、高血糖によりダメージを受けやすい場所です。動脈硬化によって網膜の血管が狭窄や閉塞を起こすと網膜が損傷し、視野の一部分が欠けてしまうなど視力に大きく影響します。進行すると大出血や網膜剥離を引き起こして失明に至るケースもあります。
糖尿病性神経障害知覚鈍麻
手や足などの末梢神経に障害が起こり、手足のしびれ、軽い痛みなどが起こります。進行すると筋肉の萎縮や筋力低下、立ちくらみ、胃腸の不調、発汗、ED(勃起不全)などの神経障害による症状が現れるようになります。特に怖いのは、痛みなどに気付ききくい感覚の鈍麻です。これによりケガやヤケドに気付かずに、潰瘍から壊疽を起こして足の切断に至るケースや、無痛性心筋梗塞を起こすこともあります。
糖尿病性腎症
腎臓は血液を濾過して尿を作っています。濾過する部分には糸球体という組織があり、ここにたくさんの毛細血管があります。この部分の毛細血管が高血糖で損傷を受けると尿を作れなくなっていき腎不全になります。こうなってしまうと、機械で血液の老廃物などを取り除く人工透析を週に2~3回、受け続けなければならなくなります。頻繁に病院通いをしなければならないため、生活に大きな支障がでてきますし、健康に対するさまざまなリスクも高くなってしまいます。
脂質異常症(高脂血症)
脂質異常症は、血液中の脂質が多い、いわゆる「血液ドロドロ」状態のことです。以前は高脂血症と呼ばれていましたが、善玉であるHDLコレステロールは数値が高い方が望ましいく、数値が低いことでも問題が起こるため、それを含めて脂質異常症と呼ばれるようになってきました。
血液中の脂質には、善玉と悪玉コレステロールと、トリグリセライドなどの中性脂肪があり、脂質異常症はそれぞれの数値により、高LDLコレステロール血症・低HDLコレステロール血症・高トリグリセライド血症の3つに分けられています。
脂質異常症は特に自覚症状が乏しく、放置してしまうケースが多いのですが、過剰な脂質が血管壁にくっついてたまり、動脈硬化を進行させて心筋梗塞や脳梗塞のリスクを上昇させます。
脂質異常症と動脈硬化
動脈硬化は、心臓から血液を身体全体に運ぶ動脈を硬く・もろくしていきます。脂質異常症では、動脈の血管壁に脂質がたまりやすく、血管が内側に盛り上がって狭窄を起こします。動脈硬化で血管が硬く・もろくなっていると、脂質異常症による狭窄で血液の流れが悪くなったり、血管が破れてしまいます。また、たまった脂質が血液と混ざって血栓を作り、これが血流にのって流れていって血管を詰まらせます。こうしたことから、脂質異常症は心筋梗塞や脳梗塞などのリスクを上昇させるのです。
心臓病には狭心症や心筋梗塞、脳血管疾患には脳出血や脳梗塞が含まれており、どれも脂質異常症によるリスクが高い病気です。動脈硬化や血液中の過剰な脂質を防ぐことは、心臓や脳に起こる重篤な発作を防ぐ上でとても重要なのです。
脂質異常症は症状がほとんどなく進行していくため、健康診断などで異常を指摘されたらすぐに治療をはじめるようにしてください。
脂質異常症の治療
食事療法や運動療法をはじめとした生活習慣の改善、そして薬物療法を行っていきます。適正な体重の維持、適度な運動、バランスの取れた食生活、禁煙などを行っていきますが、特に適正な体重と食事の管理は重要です。なお、すでに動脈硬化がかなり進んでいて冠動脈疾患などが疑われる場合には、その治療が優先されます。